卒業生の内倉真一郎さんの作品『忘却の海』が今夏、赤々舎より出版されます!
卒業生の写真家 内倉 真一郎さんの作品『忘却の海』が今夏、赤々舎より出版されます!
シリーズ『忘却の海』は内倉さんの生まれ育ち、現在も拠点とされている宮崎県延岡市の海辺に打ち上げられた、
現代社会の残骸を捉えたシリーズになります。
本作は2018年に発表したシリーズ『Collection』の系譜と捉える事が出来ます。
『Collection』は第41回写真新世紀で優秀賞を受賞(澤田知子選)、
これまで生物や都市に潜む光と影を捉え続けてきた内倉さんの新境地です。
このシリーズに在るモノたちはその辺りに捨てられたゴミです。
ゴミは私たちの営みが表面化し、手の届く範囲にのみ存在しています。
内倉さんは太陽光の下、ゴミに光をあてでゴミの影の中に潜む、人の存在を眼差しました。
本作のメインビジュアルとなっているフクロウの剥製が本校に常設しています。
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行政やボランティアの清掃の手が行き渡った海水浴場には、美しいビーチが続く。しかしそこから少し離れた海は、正反対の世界が広がっている。漂着物や不法投棄物が打ち棄てられて忘れ去られ、誰も立ち入ることさえなくなった、現代社会のありのままの海辺の姿。ゴミと化した色鮮やかさが虚しいプラスチック、手袋、おもちゃ、魚や鳥などの死骸。遠く離れた場所から時代の波にもまれ、太陽光で干からび新たな姿に変形していくものたち。現世のものとは思えぬ異様な感覚をも想起させる、人間がかつて関わっていた痕跡。私は夢中に、下ばかり見ながら、ひたすら歩く。怒りもなく、失望もない。只そこにあるものとして、一つ一つの残骸を集め、その場で記録した。ー内倉真一郎(ステートメントより一部抜粋)
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上記は昨年度開催された個展『忘却の海』に添えられた言葉です。
被写体となったゴミは行政(人の営み)が届かない場所に流れ着き、
誰も寄り付かないような不自然な自然空間を築いています。
遠く離れた誰かからのボトルメールのような物で、人々の記憶や時間、空間が集積しています。
その上を内倉さんは無心で歩き回りながら制作したと授業の際、語っていました。
現在も撮影中の今作は昨年度の素晴らしかった個展、「KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY」にて初公開、
そして「BLOOM GALLERY」巡回致しました。
それから約1年、深化する内倉さんの眼差しは展示から写真集へと変化します。
ゴミ達がどこかから延岡の海辺に、時と場所を超え、潮の流れにのり辿りついたように、
赤々舎から誰かの自宅へ、誰かの本棚で旅の終着地点を迎える事ができます。
今夏、ぜひご期待ください。
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内倉 真一郎(うちくら・しんいちろう)
1981年、宮崎県生まれ。日本写真映像専門学校(大阪)卒業後独立し、現在は宮崎県にて活動。
主な個展に『忘却の海』(2022年、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY、東京)、『私の肖像』(2020年、KANA KAWANISHI
PHOTOGRAPHY、東京/BLOOM GALLERY、大阪)、『十一月の星』(2018年、EMON PHOTO GALLERY、東京)、『犬の戦士団』・
『十一月の星』(2018年、居藝廊G.GALLERY、台湾・台北)、『PORTRAIT』(2017年、BLOOM GALLERY、大阪)など。主なグループ
展に『第8回大理国際写真祭』(2019年、中国・大理)、『My Body, Your Body, Their Body』(2019年、KANA KAWANISHI GALLERY
、東京)、『第2回寧波市国際写真祭』(2017年、中国・寧波)、『YP』(2017年、清里フォトアートミュージアム、山梨)など。
主な受賞歴に第41回キヤノン写真新世紀優秀賞(2018年澤田知子選)、 第33回・34回・36回キヤノン写真新世紀佳作(
2010年清水穰選、2011年大森克己選、2013年椹木野衣選) 、第7回EMON AWARDグランプリ(2018年) 他多数。
作品集に『私の肖像』(2020年、赤々舎刊)のほか、2022年1月からの半年間、『Early works 1: Street』、『Early works 2:
Portrait』、『佳子』、『犬の戦士団』、『十一月の星』、『Collection』の全6タイトルをKANA KAWANISHI GALLERYより連
続刊行。
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